ウヨオタク

「ネット右翼はほぼみんなアニメオタクである」というような主張は、ネットの政治界隈にいるとほぼ確実に耳にする言葉である。「ハンJ速報」や「脱愛国カルトのススメ」といったところのコメント欄でもそこそこ見かける。「てきとう」ではもっと見かける。

僕は反ネトウヨだがアニメやゲームは好きであるのだが。かつてはハンJ速報にてこのような記事を寄稿したこともあるので、興味があったら見てほしい。

 

僕の好きなアニメはどちらかというとキッズ向けの、細かいことはあまり気にせず楽しむ系のアニメであるので、やたらと高尚っぽい作風や悲観的な内容の物ばかりもてはやされる昨今のネット環境では孤立っぽい立場になってはいるけど。

 

しかし、政治思想とオタクであるかどうかが結びついて語られるようになったのは、何か切欠があるのだろうか?

ネット右翼という言葉は2000年前後から登場したらしいが、生まれた当初はアニメやオタクといったイメージはそこまでなかったようである、それがいつの間にか同一視されるようになったのかが今回の主題である。

あくまで個人的な調査の範囲なので、これは違う、起源は他にあるという意見があればコメント欄などに書き込んでいただければ受け付けるつもりです。自分が調べたところ、1つのきっかけがあったのではなく、複数の要因が絡み合っていたように見えた。

 

   最初にネット右翼とアニメなどのオタクの親和性を語ったのは20058月に「ネット右翼問題を考える国民会議」というサイトで、さらにそれを「ちゆ12歳」というサイトが反論目的で拡散をした。

   200510月に「中国が攻めてくる」と言って家族への傷害事件を起こしたひきこもりが逮捕される事件が発生したこともこの論調を加速させた?

   20083月に「ネット右翼はガンダムから政治を学んだ」と語るネットニュースが投稿されこちらもかなりの話題になった。

 

まず、調べた範囲内で、ネット界隈で最も古くに「ネトウヨ=アニメオタク」という考えを出していたのはこのサイトであった。

本宮ひろ志先生を支援する勝手連(通常時・ネット右翼問題を考える国民会議)

https://ameblo.jp/sinrigakukenkyu/

プロ奴隷が軍オタで美少女アニメ「萌え」な訳

https://ameblo.jp/sinrigakukenkyu/entry-10000609222.html

ネット右翼に関する考察をしているサイトとしてはかなり古いサイトであり(2006年ごろに更新停止しているみたいだが)、「プロ奴隷」という言葉はこのサイトが独自に使っているネット右翼を意味する物である。ここではこう語られていた。

「以前よりプロ奴隷の分析を行ってきましたが、大体のところプロ奴隷というのはミリタリーマニアでしかも美少女アニメやコスプレに興味のアル変態野郎どもであることが明かになってまいりました。」

その発言の根拠としてはこれが挙げられていた。元記事は消えていたので魚拓。

萌えるアキバが日本を変える 第15回「ミリタリー萌え(4)」(経済アナリスト 森永 卓郎氏)

https://web.archive.org/web/20050414101820/http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/colCh.cfm?i=t_morinaga80

森永卓郎という人が、2004129日に「経営サポート ビズプラス」というサイトに投稿した物である。秋葉原やオタクの動きから若者文化について調べるシリーズの一環としての物であるが、その中で「カウボーイビバップ」「APPLESEED」「サムライガン」「ジパング」などのアニメが当時人気があったことから、ミリタリー萌えが流行しているのではということを語っているのであった。

この記事を元に上記のブログにおいては、ミリタリーと萌えが融合しつつあるということから、力を求める弱そうなオタクが、ミリタリーに触れてネトウヨ思想に被れるのではという考察をしていた。

このブログの記述を「ちゆ12歳」というサイトが取り上げたこともあってか、話題はそこそこであったと思われる。

【ちゆ12歳】◇「MMR緊急報告 人類はネット右翼になる!?」の注釈です◇

http://tiyu.to/mmr07.html


ただ、どうもこの記事だけがネトウヨ=アニメオタクという論を定着させたわけではなさそうだ。Googleトレンドという、Googleでの単語検索結果を調べるサイトで見てみると、このようなものが見られた。

トレンド

Googleトレンドで遡って検索できるのは20041226日以降であるが、とりあえず2009年までの範囲で調べてみると、2か所ほど検索結果が跳ね上がった個所が見つかった。

 最初に検索数が増大した200511月のあたりではこのような事件があったのだ。発生日は20051024日だ。 家族3人切られ重軽傷 殺人未遂で二男逮捕

https://web.archive.org/web/20051220203219/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051024-00000100-kyodo-soci


24日午前5時10分ごろ、愛知県大府市北崎町井田の建設業布目伊調さん(68)宅から「二男が刃物を振り回している」と妻の美代子さん(61)が110番した。布目さんと長男明光さん(40)が全身数カ所を刺され重傷、美代子さんも頭を切られ、軽傷を負った。

駆け付けた東海署員が殺人未遂の現行犯で無職の二男光隆容疑者(38)を逮捕。同容疑者は「中国が攻めてくる」などと話しているという。

同容疑者は布目さんの仕事を手伝っていたが、半年ほど前から「体が疲れた」と仕事に行かなくなり、離れの自室に閉じこもってインターネットをするようになったという。

(共同通信) - 10241247分更新


今でも時々語られることがある、ネトウヨの引きこもりが家族を攻撃したという事件である。元々引きこもりなどに対してはアニメゲーム好きといった見方があったのに加えてこのような事件が発生したということで、この事件が2ちゃんねるで話題になったときもネトウヨとアニメの親和性についてさらに言われるようになった。

【愛知】「中国が攻めてくる」とひきこもり無職の男暴れる。家族3人切られ重軽傷

https://news19.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1130368148/


もう1つ検索数が飛びぬけている箇所があるが、ここは20083月ごろであった。この時期には、以下のようなネットニュース記事が投稿されていた。

【カオス通信】ネット右翼はガンダムが起源? マスゴミが促進する右傾化

https://news.livedoor.com/article/detail/3571555/

http://itlifehack.jp/archives/204536.html

「レッド中尉」という名前の、アニメ関連の話題をよく取り扱っていたというライターが投稿した記事である。

ライターは思想がネトウヨであったようで、ニュースで中国の人権弾圧などの事件について消極的な対応をするマスコミや政治家への失望と、それに抗議するネット民への高評価を語っており、「正常な感覚の持ち主がネット右翼と揶揄されている」と言っていた。

記事での発言についてさらにいくつか抜粋してみよう。


(前略)

「反日思想」や「共産主義」に抗議する発言をしても、言論の自由が認められた日本では何も問題がないはずですが、どうやら一部の人々にはそれが気に入らないようです。現在もネット上では「右派」と「左派」による果てしなき論争が続いていますが、こういった政治的な思想の源流に“ガンダム”の影響があるという説があります。

今回はそのあたりを探っていきたいと思います。

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「ネット右翼ってどんなヤツ?」(宝島社)という本に、『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインを担当した安彦良和氏のインタビューが載っていましたが、そこで安彦氏は「今の若い層は"サブカル"として政治づいてる」とコメントしていました。

思えば『機動戦士ガンダム』は、宇宙移民の独立を求めたジオン公国が地球連邦に独立戦争を挑むという図式の「戦争と政治」を描いた作品でした。そんなガンダムは若い世代への政治認識にも影響を与え、「ガンダムの世界観」を「実際の政治」に置き換えて考えるという、サブカルから政治を学ぶ流れを作った作品でもあったわけです。

ちなみに「ネット右翼ってどんなヤツ?」では、ネット右翼と呼ばれる人々の対談も掲載されていて、その対談に参加した6名中2名がガンダムファンという状況でありました。さらに「アニメファンは全員右派」という発言も飛び出した模様ですが、さすがにそれは極論すぎる気がします。確かにアニメのストーリーに政治の要素がからむというのは、今では普通に行われていることなので、アニメから政治を学ぶというケースは多々あるとは思いますが……。

(以下略)


とこのように、ネットで政治的な言論をする人が多いのはガンダムが影響していると大いに語っている。しかも、「ネット右翼とはかつて彼らが自称として誇っていたがあまりにもひどい行動が目立ち蔑称となっていった」歴史をなぞるかのように、「ネトウヨ自身がガンダムなどのアニメから政治を学んだと自ら誇りを持って発言したのが始まりだった」のである。

このニュースが話題を呼んだのか、2ちゃんねるでもいくつかスレが作られた。

【論説】「反日に抗議する人を“ネット右翼”と揶揄する人も」「“マスゴミ”が右傾化促進」「ネット右翼はガンダム起源)」…カオス通信

https://mamono.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1206674038/

この話題はかなり耳目を集めたようでスレッドもそこそこ伸びたのであった。

 

このように、ネット右翼とアニメオタクが結びつけられた背景には、1つの出来事があったわけではなく、複数の事件や記事が絡み合った結果、今に至るようである。